『第24話「いざ奥州へ!!」』
早朝。
朝日も上がっておらず、まだ誰も起きていない時間帯なので城内は静かだ。
そんな中一人起きた者がいた。
「伊達ちゃんには悪いけど…そろそろ甲斐に帰らなきゃ…」
現代に帰れない今となっては甲斐がの家のようなもの。
奥州に連れ去られてかれこれ一週間が経つ。
流石に寂しくなって来たようだ。
制服に着替える為布団からそっと出ようとしたが、何かが腰に巻き付いて出るに出られない。
何だろうとふと横を見ると、破廉恥筆頭伊達政宗がそれはもう幸せな顔で眠っていた。
「きゃーーーーーー!!!」
静かな米沢城にの悲鳴が響き渡った。
「政宗様。貴方には呆れましたよ」
「だからって入ってくるなりタコ殴りする事ねーだろ…」
「女子の寝所に侵入するとは…まさかと思った事を普通にやってのけますねこのクソ変態。ほら正座!!」
駆け付けた小十郎に説教されてはや3時間。
小十郎は目の下クマだらけで、睡眠不足まっしぐらと言わんばかりの顔だ。
それに対してタコ殴りにされた政宗の顔は見れたものではない。
そんな二人の様子を楽しそうに見物する成実と顔を真っ赤にしている。
今日も奥州は平和だ。
しかし一方では修羅場な所もある。
それは武田信玄が治める甲斐。
「殿の奪還…出来なかったのでござるか!?」
「申し訳ございません」
そんな…と落胆する幸村。
霧隠達は佐助に仕える優秀な忍。
与えられた任務は短期間できちんとこなして帰ってくるので、てっきり連れて帰って来たのだとばかり思っていたらしい。
その二人が無理だったという事は奪還は余程困難のようだ。
「朝から晩までベッタリって言うのはああいう事を言うんだろうねー。
奪還の機会を天井裏からうかがってたら独眼竜の奴こっち見てほくそ笑んでたし。
あれは絶対僕等が忍んでたの気付いてたね!」
「自信を持って言うな望月。強引に奪還を遂行すれば独眼竜との直接戦闘も考えられます。
そうなれば我等では対抗出来ません。よって一旦帰還しました」
「ふむ…」
「…ちょっと待って。ベッタリって何…?」
「うわ佐助!いつからそこに!?」
縁側で報告を聞いていた幸村の後ろには、いつの間にか佐助がいた。
かすがを庇って政宗の攻撃をもろに喰らい、瀕死寸前にまで追いやられた佐助だったが今はようやく歩けるまでに回復した。
だが安静にしろと幸村達から五月蝿く言われ、今まで強制的に寝かされていたのだった。
「さっきからいましたよ。それより朝から晩までベッタリってどういう事なのか説明してくれないかな望月」
「言葉の通りだよ。四六時中抱きついて離れない。
仕事の時も御飯食べてる時も寝てる時もさー正直見ててウザい事この上ないね」
こうしてる間もずっと抱きついてると思うよー?それ以上の事してたりして…と言った瞬間何かが切れたような音がした。
「あんの変態!!やっぱり俺が行かなきゃ…!」
「ななな何を言っておる佐助!お前は怪我人なのだぞ!そんな体では戦闘はおろか奥州に行くのも無理だ!」
今から奥州に行こうと支度を始めた佐助を幸村が慌てて止めた。
霧隠も「今は安静にしてた方がいい」と判断し幸村の意見に頷く。
幸村の馬鹿力に押さえ付けられ、又もや布団に寝かされた。
早く助けに行きたいと思う気持ちは募っていくばかり。
佐助を寝かせた後幸村は信玄の部屋に向かう。
お決まりの台詞「うお館様あぁぁ!!」と叫びながら。
当然信玄も「ぃ幸村ぁ!」と叫び部屋に入ってきた幸村を吹っ飛ばす。
あんたら少し静かに出来ないのか、だがツッコむ人間は残念ながら今はいない。
ひとしきり殴り愛が終わった後幸村は本題に入る。
「お館様!早く殿を助けに行きたいでござる!」
「儂とて出来る事なら早く助けたいとは思っておる。じゃが…」
問題は武田の今の兵力。
つい先日軍神との戦を終えたばかりで川中島で受けたダメージは相当なものだった。
そして佐助が療養中。
日本一の兵である幸村は政宗に惨敗。
どうしたものかと頭を悩ませる二頭身モードの甲斐の虎。
何にせよ奥州に攻め入るにはまだまだ時間が掛かりそうだった。
「ところで佐助の事なのじゃが…お前に一つ頼みたい事がある」
「?何でしょう」
夜になり、見張りの兵士以外は皆寝静まった時間。
だが我らがおかん佐助だけは起きていた。
「旦那や大将には悪いけどこのままずっと大人しく寝てるなんて俺には出来ないよ」
忍装束に着替え武器を装備し、支度を終えた佐助は部屋を出る。
見張りの兵士達に見つからないように足音を立てず歩きだす。
そして塀を飛び越え、外に出ようとした。
が、しかし…
「何処に行く気だ佐助?」
「!?だっ…旦那!?」
慌てて後ろを振り向いたその先には幸村が立っていた。
いつもなら爆睡しているはずなのに今日に限って起きている。
良い子はもう寝てる時間だよ真田の旦那!と言いたかったが、本人にそれを言えば「子供扱いするな!」と逆ギレされそうなので黙っておいた。
城内でしかも真夜中に、虎炎だの火焔車だのされたらたまったものではない。
「流石はお館様!佐助の行動もお見通しでござるな」
「ど…どういう事それ」
「歩けるようになったしそろそろお前が城を抜け出して奥州に行くんじゃないかとお館様は予想され、某に見張っておけとご命令下さったのだ。
見張っていて正解だったな」
読まれていたか…。
思わず主の前で舌打ちをカマす。
「言っておきますけど今回ばかりは命令とか言われても聞きませんよ。俺にとってはちゃんが一番大事だし。
そりゃあ忍は本来感情を殺すようにって教えられてるけどさ。ここで旦那と闘う事になっても俺行きますからね。
それでも旦那は俺をとめますか?」
「うむ。怪我が治りきってない今のお前なぞ3秒で瞬殺出来るしな」
間髪を入れずに答える幸村。
黒い事をさらりと普通に言ってのけた。
佐助はてっきり幸村が困りまくるとばかり思っていたので、そのショックはでかい。
それと同時に「お母さんそんな黒い子に育てた覚えはありませんよ!」と叫びたくなったらしい。
そんな事を言っても「某も佐助に育てられた覚えはない」と言い返されるのがオチなのだが。
ちなみに時々幸村が黒くなるのはどうやら兄・信幸の影響らしい。
どうしたものかと内心慌てていた佐助を暫く眺めていた幸村は溜息をつく。
「…本当はそう言いたい所なのだが実は某も奥州に行きたくて仕方がないのだ。
お館様には申し訳ないが殿を助ける為に某も佐助と一緒に行くでござる。それに佐助は某が一番信頼している忍故戦いたくないしな」
「だ…旦那…」
一番信頼している。
その言葉にじーんと胸に熱いものが込み上げる。
俺様この人についてきて本当に良かったと心から思った。
だが次の瞬間…
「一人で行かせて抜け駆けされたらたまらんしな…奪還した後二人きりになったら殿に破廉恥な事をする気であろう?」
胸に込み上げた熱いものが一気に冷めた瞬間。
前言撤回という言葉が頭に浮かんだ。
と言うか、ついこの前まで恋愛のれの字もなかった人間が、こんな事を言うようになってもうおかんはお手上げ状態だ。
とりあえず幸村が黒くなり始めているので、話題を変える事にした。
「それはそうと旦那」
「何だ図星だったのか?話題を変えようとしてもこの真田源次郎幸村騙されは…」
「もうお前黙れ(何かが吹っ切れたらしい)旦那が大将の命令聞かないなんて初めてじゃないですか?」
しばし沈黙。
幸村の顔に冷や汗が伝っていたが気のせいにした。
「…とりあえず帰った時が怖いでござるな…」
「大将の雷…いやこの場合隕石が降るね…」
後にこの二人は、戦極ドライブ状態の信玄に究極BASARA技を喰らう事になる。
一方は、政宗と小十郎が所用で外出している間一人、部屋の窓際でうとうとしていた。
抜け出すチャンスは今しかない!と思ったが成実に付きまとわれていたので(構って貰いたかったらしい)あえなく断念。
はぁ…と軽く溜息を付いているとの前に一匹の大きな烏が現れた。
足には手紙らしき物が巻き付けられている。
「手紙…誰宛かな?」
よく見ると手紙に自分の名前が書かれてあったので読んでみると、なんと佐助からだった。
−助けに行くからもう少しの我慢だよ−
どうやら佐助がこちらに向かっているらしい。
怪我の事が気掛かりだがとても嬉しかった。
烏はが手紙を見たのを確認すると、再び空へと飛んでいく。
は手紙をスカートのポケットの中にしまった。
政宗達が帰って来た時に出迎えたの顔が、やたらめったら嬉しそうだったのは言うまでもない。
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NEXT
何かこう奪還奪還言ってたら某奪還屋を思いだします。
幸村は普段すぐ寝る子なので多分佐助の見張りやってる間何回か意識飛んでたんじゃないかと。
幸村が何だか黒いような気がするのはこの際スルーですスルー!
それにしても手紙を読んだのがヒロインじゃなくて奥州ズだったら大変ですよこれ。
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