『第27話「おかんだけど男でもある」』



「さぁて真田幸村は小十郎に任せてこっちはこっちで楽しもうじゃねーか」


刀を抜き、その切っ先を真っ直ぐ佐助に向ける。
このまま闘えば、佐助に勝ち目はない。


「へっ、冗談!悪いけどこの前旦那に攻撃喰らって、俺様まだ傷癒えてないんだよねー。だからここは退散させて貰うよ」
「てめえが退散するのは勝手だがを渡す訳にはいかねえんだよ。どうしても連れ戻してえんなら俺も容赦はしねえ」


部屋の空気がだんだん張り詰めてきた。
部屋にいるだけでピリピリする。
政宗の威圧、そしてわずかだが、体から発する蒼い電気が張り詰めた空気を、より一層強くしている。
佐助とは本能で感じ取った。
こりゃヤバイと。
どんなに戦場で自軍が危機的状況に陥っても、何処か楽しんでいるのがいつもの政宗だったが、今回は違った。
今の政宗は、楽しんでいる所か微塵も笑っていない。
本気の目だった。
今政宗が見ているのは佐助なのに、何故かまで睨まれているような感じに陥ってしまう。
竜の目に睨まれたが如く。
対して政宗はを取られたくないという思いでいっぱいだった。
政宗の性格上、こんな事は絶対に口には出さないが、自分にとっては精神安定剤のような存在だ。
出会った時は変な女としか見ていなかったが、一緒に過ごしていく内に誰よりも心を許せる女へと変化していった。
だから必死だった。
相手は自分の攻撃を受けて、傷を負っている。
実力からしてたった1人の忍を殺す事位簡単なはずなのに、心には余裕が無かった。


「伊達ちゃん…」
…行くな」
で…でも…
「行くんじゃねえ!!!」


乱暴な口調だったが、まるで親に置いていかれる子供が、「行かないで」と泣きながら叫ぶような言い方でもあった。


「ちょっと女の子に対して怒鳴るのはどーかと思うんだけどね。ほらちゃん怯えてんじゃないか」


はっとの顔を見ると、佐助の言う通り怯えている。
目を合わせると、佐助の後ろに隠れてしまった。

−怖い−

が自分を見る目は、昔のトラウマを思い出させる。
右目を失った当時の自分を見る周囲の目と同じに思えた。
暫く沈黙が続いたが、その沈黙を破るかのように廊下から何かが走ってくる音が聞こえ始めた。
だんだんこちらに向かって近づいてくる。
そして障子が勢いよく破られる。


「某はぴいまんは苦くて嫌いでござるぁぁぁ!!!」
「真田の旦那!?」


小十郎に追われて、天守まで走って来たらしい。
半泣き状態で意味不明な事を叫びながら、障子を破り部屋に乱入して来た。
そしての表情を見ていた政宗は油断し、又もや幸村の下敷きになってしまった。
そして幸村を追い掛けてきた小十郎が、「俺の育てた野菜が食えんのかー!ピーマンはな明治初年アメリカから渡来したトウガラシの甘味種で(以下略)」等と叫びながら入ってくる(なのでピーマンは戦国時代にはないようです)
そして幸村と同じく、政宗を下敷きにした。


「!?政宗様!何故そのようなお姿に…政宗様あぁぁあ!!!」


一体何故野菜の話になったのかは謎だが、今がチャンスと言わんばかりに、佐助はを抱えながら素早く印を結び、霧隠れの術を使い幸村と共に城から抜け出した。


「真田幸村…一度ならず二度も踏み付けやがって…今度会ったら覚えてろよあの野郎…」


障子を蹴飛ばしムクッと起き上がると、いつの間にか小十郎は元に戻っていた。


「政宗様!あっあの…真田幸村は…!?殿は!?」


変身している間の記憶がないので刀を持ちながらオロオロしている。


「…さぁな。知らねえよ」
「知らないってそんな…」


そんなはずないと言おうとしたが、言うのを止めた。
いつもの政宗にしては、何処か様子がおかしい。
背を向けて拗ねたような声を出す態度は、まるで昔の梵天のようだった。


「政宗様…?」


自分をあんな目に合わせた政宗を軽くシバいてやろうかと最初は思っていたが、政宗の顔を見た小十郎は声すらかけられなくなった。
泣きそうな顔をしている。


 

好き過ぎて自分の側から離したくなかった故に、ついカッとなってしまった。
いつもは人に対してcoolじゃないと言っておきながら、今の自分が一番coolとは程遠い。
そして何より怒鳴ったからとはいえ、あんな目で見られるとは思いもしなかった。
怯え方が普通とは違う。
よくよく考えれば怒鳴って怯えたというよりは、もっと違う何かに怯えていた気がする。
では何に…?







 

 

 



「いやー危機一髪だったねー」
「某まだまだ修業不足でござる…片倉殿に苦戦していては伊達政宗と戦っても勝てぬ」
「そんな事ないよユッキー」


しゅんとうなだれながら歩く幸村を励ますだったが、声に元気がなかった。


「?怒鳴られたのがそんなに怖かった?」


旦那はcrazyで有名な男だから気にしない方が…と、佐助は手をヒラヒラさせながら言ってた。
確かに政宗に怒鳴られるのはこれが初めてだし、正直あんなにムキになるとは思わなかった。
怖かったけど、本当に怖かったのはそれじゃない。
私が本当に怖かったのは、伊達ちゃんの…


殿?」
「あっ御免!何!?」
「泣いてるでござる…」
「へっ!?嘘!?」


気付けばいつの間にやら、涙が零れていた。
政宗の事や寂しかった事、そして2人に再会してようやく甲斐に戻れるという安心感が、ごちゃごちゃになり無意識に涙が出ていたらしい。
人前で泣くのが恥ずかしくて、ごしごし手の甲で涙を拭っていたが、次から次へと溢れ出し止まらない。
幸村もどうしていいか分からず慌てていたが、佐助だけは何も言わず微笑みながら頭を撫でてきた。
撫でられただけなのに、不思議と安心出来た。


「佐助…おかんみたい」
「でもねちゃん。本当のおかんはこんな事しないよー?」
「へ?」


佐助の顔が近づいたと思ったら頬に接吻された。


「あ゛ーーーーー!!!」
あ…あわわわわ…///


いきなり何をと言いたいらしいが、口が思うように動かず魚のようにパクパクしている。
幸村に至っては、顔がムンクの叫び状態だ(重傷)


「おかんとか言われてるけどその前に俺様だって男だからね♪好きな子が目の前で泣いてたらほっとけないし?」
「すすす好きな子!!!???」
「(バブチッ/何かがキレた音)
………………佐助…殺す


槍を構え、普段ならば絶対に口にしない事を呟く幸村。
怪我人相手に、殺る気満々だ。
暴力反対と笑いながら叫ぶ佐助の頬に、苦無が数本掠った。
投げたのは…何とかすがだった。


「かすが姉さん!?何でここに…」
「たまたま通り掛かっただけだ!!」


と言うのは実は真っ赤な嘘で、以前かすがは政宗を討ち取ろうとして、逆に佐助に助けられた事がある。
その借りを返そうと思い、佐助が危機に陥った時に助けようとしていたらしい。
…出番は無かったが。


「かすが姉さん久し振りー!!」
「こら抱きつくな!!私に抱きついていいのは謙信様だけだ!!


相変わらず謙信様命のかすがだがの事も少し好きらしい。
こう何度も姉さん姉さんと呼ばれるとが妹のように見えてくる。
そんな感じでを見ているので、先程佐助に接吻された時は、本気で佐助を殺すつもりだったようだ。


「米沢着いた辺りからずーっとこっち見てただろ。ついにすとーかーっていうのに目覚めたのかと思ったぜ
死ね!!お前の顔など見たくない!!」


怒り狂ったかすがが、笑い飛ばす佐助に掴みかかり、忍同士のプチ喧嘩が暫く続いた。
そしてかすがと別れ、ゆっくりまったり帰っているとすっかり夜になってしまった。


「お館様は殿がいない間凄く心配しておられたのだ。早く会いに行くでござる!」
「そうだね!」
「「ぅお館すぁまぁぁぁ!!!」」
「あのさー…って行っちゃった…」


元気に信玄の部屋に向かって走っていく2人。
だが、ここで忘れてはいけない。
本当なら、川中島の合戦中は甲斐で留守番をする事になっていたが、信玄の言い付けを破って戦場に来た挙句、敵将にさらわれる。
そしてそんなを助けるべく、幸村と佐助は信玄の指示を待たずに内緒で城を抜け出し、米沢城で大暴れ(その大半が幸村)
さて、そんな3人を待ち受けるのは…いつぞやの話で書いた通りである。


「んの馬鹿もんがあぁぁぁ!!!」


部屋に入るなり、いきなり戦極ドライブ。
続いて究極BASARA技を放ち、とどめに「知り難きこと陰の如く」で幸村を瀕死に追いやった。
いつもの殴り愛のレベルを遥かに越える攻撃だ。
次にの頭を「心配したのだぞ」と言いながらポコッと小突き可愛い小さなタンコブが。
最後に佐助。
彼は怪我が完治していないので、手加減をしようかと思っていたらしいが既に手遅れだった。
2人を止めに部屋に入った直後、戦極ドライブで弾かれダメージを受けたおかんは…御臨終。
又、療養の日々を送る羽目になったのだった。


NEXT


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ついに奥州篇完結!!
今までで一番長く打った気が…前の携帯だったら確実に文字数OVERしてる;;
伊達殿がへーたーれー…になっちゃった…。
いつもカッコイイ伊達殿だけどたまには子供みたいに癇癪起こしたりするのも良いと思うんですよ。
しかしヒロインとの間にわだかまりがぁぁぁ…。
にしても今回は何かむずがゆい仕上がりに(笑/どんな表現
んもー毎度じれったいって言うかへたれ駄文って言うか…救いようがないってこの事だね実際問題!!
果たしてこの後どうなるのか!?
…ってかこんな事になるなんて予定に入れてない!!(脱線!!)
………こんな時は……(クワッ!)
はい皆さんご一緒にぃ!!
「計算してないぞ!!!」
ブラウザでお戻り下さい(何この切り替え…!)


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