『第28話「竹林院上陸!!」』



が甲斐に帰還し、武田はようやく一段落した。
暫く戦もないようなので、達も思いっきり羽根を伸ばしている。
最も佐助だけは、戦が終わっても家事やら偵察やらと追われていたが。
そんな平和な毎日も終わりを告げようとしていた。
新たな騒動に巻き込まれる事など、今の達には知る由もなかったのだった。


「おはようでござる殿!」
「ん〜…はよ〜朝から鍛練?元気だねー」
「やる事がなくて暇でござるからな。修業しか思い付かぬ」
「確かにねー。何かこう面白い事ないかなぁ…お館様の兜が虹色のアフロになってたりとか…
なーんて


…あふろ?
それは異国語なのだろうか?
とりあえず、アフロの意味が分からない幸村は、しきりに?を飛ばしていた。
一方は、幸村の槍を見てふとこんな事を呟く。


「あたしもユッキー達みたいに強くなりたいなぁ…」


思えばこっちに来て、何かの役に立った覚えがない。
皆に迷惑ばかりかけてる気がする。


「このまま何もせずに居座る訳にも行かないしなぁ…」
殿は佐助を助けたではないか!佐助を背負って本陣まで歩いて来たと兵士に聞いたでござる!」
「う〜…(黙っててって言ったのに〜)」


馬鹿力を強調されてるような感じがしたが、幸村なりの精一杯の励ましだ。
勿論悪気はない。
今考えると、あの力は何だったんだろうかと思う。
火事場の馬鹿力にしては何処となく違う感じがした。


「ユッキーちょっと御免ね」
「?」


は何を思ったのか、幸村の前に立ち、腰に手を回した。


「なっななななな朝から破廉恥な!そそそ某ままままだ心の準備が…!」


一体何を想像したのか、に抱き着かれた状態で硬直している。
かなり幸せな気分に浸っていると、次の瞬間天国へ昇天する事に。


「せーのぉ…
てい!!
ぐえっ!


は、腰に回していた手にありったけの力を込め、幸村を持ち上げようとした。
ギリギリ…と嫌な音を奏で、腰を圧迫されている幸村は、良さ気に三途リバーを見た。


「何でー!?前は佐助持ち上げられたのにー!!」


力が足りないのかなぁ…と更に力を込めた。
そして偶然通り掛かった佐助がそれを見つけ、慌てて制止に入る。


ちゃん旦那が死にかけてるよ!」
「へ?きゃーユッキー御免!!しっかりー!!」
「な…何のこれしき…」
「…何やってたのさっき」
「え?あーうー何でもないの!ちょっと実験してただけー」


あははと苦笑いしながら、幸村を起こしにかかる。
佐助も深くは追求しなかった。
幸村を起こした後、一息付くとのお腹から、可愛らしい音が鳴った。
慌ててお腹を抱えたが、2人には丸聞こえだったらしい。


「朝御飯まだなんだろ?俺も任務から帰って来たばっかでまだなんだ。皆で食べよっか」
「うむ!」
「はーい!」




「いっただっきま〜す!」
「…」


丁度その頃、霧隠達も朝御飯を済ませていた。
彼らは、最近力を付けている織田軍や豊臣軍の偵察を任され、佐助同様朝帰りになったのだ。
他の十勇士達は疲れ切っていたが、唯一望月だけは元気一杯だった。


「皆元気ないなぁ…あっそうだ!僕の爆弾あげよっか!?景気づけに一発…」
いらん!!


真っ正面に座っていた筧が、火繩銃で望月の頭を打ち抜いた…はずだったが、紙一重で避けられた。
代わりに部屋に入って来た佐助に、流れ弾が当たるはめに。


「…筧(怒)」
「あーぁ怒らせちゃった」
「誰のせいだ誰の!?」
「望月の飯の上に爆弾が乗っかってるでござるぁぁぁ!!!
「嫌ー!!!」


望月の周りは爆弾騒ぎが日々絶えない。
ここまで爆弾好きだと変態の域だ。
隣の席に座っていた霧隠は、任務で疲れている為、いつも以上に動じない。
佐助がやれやれと言った感じで席に付くと、霧隠がようやく口を開く。


「信玄公からあの話は聞いたか?」
「あの話?何の事?」
「幸村殿と竹林院殿がみあ…」
ぃ幸村ぁぁぁぁあああ!!!


霧隠の話を遮るかのように、部屋に乱入してきた信玄。
いつもならすぐ様殴り愛に発展するのだが、今回はどうも様子が違った。
信玄の顔色が明らかおかしい。


「どっどうされましたうお館様!?」
「幸村…これを見よ」


信玄から渡された一通の手紙を受け取り、文面を読む幸村だったが、見る見る内にその表情が険しいものへと変化していく。
一通り読み終わった後、幸村は叫んだ。


某はお見合いなどしたくないでござるぁぁあ!!!
えー!?


一同唖然。
想い人がいる幸村にとって、これは深刻な問題だった。


「大谷吉継殿が娘の竹林院という姫をお前の正室として嫁がせたいそうだ。後日甲斐に来るらしい。」
「そ…そんないきなり…ぅお館さむぁぁあ…」
(情けない声を出すな幸村よ!これは試練じゃ!!お前も男なら自分でなんとかしてみぃ!!)
(
…こんのハゲ!!!)
(
はっ…ハゲ!?ぃ幸村ぁぁあ!!)


アイコンタクトで繰り広げる会話に、は首を傾げるばかりだったが、
とりあえず信玄が幸村に何か言われてショックを受けている事だけは分かった。


「どーすんの真田の旦那…」
「…こっちが聞きたいでござる…」


いきなりの見合い話に、どう対処していいか分からない。
只でさえこんな話が舞い込んでくるのは初めてだというのに。
自分は一生信玄の側で働く事しか考えていなかった為、余計混乱していた。
幸村はこの手紙を読んだその日から、眠れない毎日を送る羽目になる。






数日後、武田の城内では女中達や兵士が、慌ただしく動き回っていた。
今日はいよいよ竹林院が甲斐に来る日。
何もする事がないは、その様子をただ黙って見ていた。
一方幸村はというと、いつもの服を着ている訳にもいかず、佐助に正装する様に言われ、仕方なく袴着を着ていた。


「…」
「旦那〜ちょっとの辛抱だよ。そんな不機嫌な顔してちゃ相手に失礼だから」
「某見合いなんてしたくないでござる」


ムスッと膨れっ面丸出しで、文句を言う幸村。
綺麗に正装しても、これでは台なしだ。
目のクマがそれを更に助長している。


「まだ会ってもないのに…もしかしたら旦那好みの姫君かもしれませんよ〜?」
「某は殿を嫁にしたいのだ!!」


ぎゅーっと佐助の髪の毛を引っ張りながら叫んでいると、が部屋に入って来た。


「呼んだ?」
「……………今の…聞いてたでござるか?」
「へ?何が?」


どうやら聞かれていなかったようだ。
安堵する幸村。
はそんな幸村の様子に?を飛ばしていた。


「ねぇちゃん!それよりさ!どう?旦那の姿」
「わーユッキー雰囲気違うね!大人っぽーい!!カッコイイよ♪」


それはつまり今までの服がガキくさいと言う意味なのだろうか…(決してそんなつもりで言った訳ではない)
睡眠不足な幸村の思考は、悪い方にしか行かないらしい。
だが、その後のカッコイイ発言で暗い思考は上書きされ、有頂天だった。


「今日ってさ松竹梅って人が来るんだよね?」
竹林院だよ。竹しかあってないから」
「どんな人なんだろうね〜会うの楽しみだな〜♪」
「何かすっごい美人って聞いてはいるけど…それ以外は俺も知らないんだよね」


佐助は、姫には全く興味がないらしい。
幸村が早く姫とくっついてくれないか、幸村がを諦め姫を選ばないかと
何かと恋のライバルが減る事ばかり考えている。
ライバルは消えてくれた方が、こちらとしては嬉しい。
佐助の腹の中は、真っ黒だった。


「佐助…今良からぬ事を考えただろう」
「え?べっつに〜旦那の気のせいですよ!」
「あれ?ねぇねぇ2人共ーあれじゃない?」


窓際で竹林院が来るのを今か今かと待っていたは、城に向かって歩いてくる行列を指差した。
行列の中には、姫がいるであろう輿が。


きっきっきっ来たーーーー!!!!


一目散に逃げ出そうとした幸村をすかさず捕まえ、
佐助は満面の笑みで「わざわざここまで来てくれたんだから迎えに行くのが礼儀でしょうが」と言う。
は、佐助の後ろにどす黒いものが渦巻いているのを一瞬垣間見たが、気のせいにしておいた。


「じゃっ旦那」
「なっ何だ!?」
いってらっしゃい!!!
「いやーユッキー!!!」


佐助は、中々行動を起こさない幸村の襟元を掴み、窓から放り投げた。
丁度、幸村の落下地点は姫の輿の目の前。
幸村は受け身を取れず、顔面から逝った。


「うぐぐ…佐助ぇ今度の任務で死ね…
「幸村様?」


声に反応してムクッと起き上がると、目の前に誰かが立っていた。
髪の長い少し童顔の女子で、その肌は透き通るような白さだった。


「い…いかにも某が真田源次郎幸村でござるが…」
「やはり幸村様だったのですね!」


女は嬉しそうに笑った。


「お初にお目にかかります幸村様。竹林院と申します」


頭を下げ、礼儀正しく幸村に挨拶をする。
ここから幸村の試練が始まるのだった…。

NEXT
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前回と負けず劣らずの長さに…。
私去年まではあの赤いふわふわがお館様の髪の毛だと信じて疑いませんでした…。
出家してあーゆー風になったと隅田子に聞くまでは。
いやービックリしたー。
竹林院って名前は尼さんになってからの名前らしいのですが(隅田子談)
尼さんになる前の名前が見つからなくて仕方なくこのままで行きました。
ブラウザでお戻り下さい。


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