『第39話「一件落着?」』
瀬戸内タッグを何とか破り、長曽我部軍は降伏、
元親と元就は捕縛され牢屋に入れられる事となった。
その夜、皆は突然の戦で疲れたらしく兵士達もいつもより早く就寝している。
は幸村と佐助の傷の手当てをしながら他愛ない話をした後自室に戻ったが、
牢屋に入っている元親と元就の事が気になった。
一日中陽が全く当たらない牢屋は思った以上に寒い。
傷もそのままで大丈夫だろうかと心配したは見張りの兵士に無理を言って、
2人に会わせて貰う事にした。
本当なら牢屋には関係者以外立ち入り禁止なのだろうが…。
この事がバレたら政宗達にこっぴどく怒られるに違いない。
牢屋の中は薄暗く、明かりは蝋燭のみ。
点々と置かれた蝋燭の火が隙間風でゆらゆらと揺れている。
オレンジ色の淡い光に照らされた一番奥には厳重な牢が2つ並んでいて
そこに2人は入れられていた。
手足を動かせないように頑丈な手枷・足枷を付けられていて動き辛そうだ。
流石にオープニングで登場した明智程ではないが…。
「親ちゃん、毛ちゃん」
「!?」
「何をしに来た?」
牢屋を訪れたの姿を見て、元親は何故か赤面しながらあたふたしている。
こんな情けない鬼の姿を見ないでくれだの恥ずかしいだのと、
顔を手枷のついた両手で隠しながらとにかく叫んでいた。
話し掛ける暇もない。
捕虜でも乙女全開だ。
元親とは正反対に日輪の申し子は不機嫌だった。
智将と呼ばれた元就がまさかの敗北、しかも相手は武田の忍。
トドメに自分が張った罠により自爆とは。
天よりも高く海よりも深い元就のプライドはズタズタだった。
膨れっ面になってそっぽを向いたまま、こちらを見ようともしない。
今まで知り合ってきた武将達は皆優しくて親近感を持てたのだが、
どうも元就に対しては接しにくい。
仲良くなるどころか話をするのもままならないといった感じだ。
「何をしに来たって言われても…その…怪我してるし…心配だったから…その…」
「あっヤバい就ちゃん、今胸がドギューンって来た」
「もう貴様永久に黙れ」
胸を押さえる元親に元就は一掃した。
「何で分からないんだよこの気持ちが」と元親はへこたれながらブツクサ言っている。
当然放置プレイする元就。
分りたくもないという気持ちが顔にあらわれていた。
「我は貴様が思っている程やわではない!そこの半鬼半姫の変態はどうだか知らんがな」
「そ…そっか」と頷く。
は何か話題はないものかと考え、
試しに前々から気になっていた事を2人に聞いてみる事にした。
「ねっ、ねえ!あっ、あのさ…2人の関係について聞きたい事があるんだけどね?いいかな?」
「おう、何だ?」
「くだらん内容なら答えぬぞ」
「ずばり!親ちゃんと毛ちゃんって夫婦なの!?(どほほ〜ん)」
ちーん…。
静かな牢屋が更に静かになり、温度も少し下がった気がした。
見張りの兵士は入り口から「マジでか」というような表情でこちらを伺っていた。
元親と元就は真っ青なまま暫く固まっている。
2人の心象風景はきっとブリザードだろう。
遭難確実だ。
そんな事など露知らず、は「違うの…?」と首を傾げていると、
2人は血走った眼になりながら揃って抗議した。
「貴様は馬鹿か!?何処をどうしたらそんな思考になる!?
よりにもよってこんな変態乙女と!!散れ!!」
「そうだぜ!こんな冷酷なオクラの妖精なんかと結ばれたらお先真っ暗に決まってる!!
それに俺はさっき初恋したばっかなんだ!!って何言わせんだよ畜生ー!!///」
照れている元親をよそに「何だ、違うのか…」とはガックリする。
元就は、牢屋の前で落胆するに腹を立て、
何処から出してきたのかはたきでバシバシ叩いてきた。
しかもよく見ると、はたきが浮いているではないか。
はたきを手で持つ事が出来ないので、妖精パワーでも使っているのだろう。
ここまで来ると、もう人間というのも怪しく思えてくる。
痛い痛いと訴えると「貴様が変な事を聞いてくるからだ!」と更に叩いてくる。
日輪の申し子は、例え相手が女子であっても容赦しない。
ついでに隣の牢屋にいた元親も、何故か巻き添えでバシバシと叩かれてしまう。
少しは叩かれる身にもなって欲しいものだ。
まぁ輪刀で切り裂かれるよりかは断然マシなのだが…。
少しでも近づこうとすると牢屋越しからはたき攻撃を喰らってしまうので、は「御免なさーい!」と謝り、
半ば逃げるように退散した。
何やら元親がはたかれながらも必死の形相で「行かないでー!」みたいな事を叫んでいたが、
見張りの兵士達には聞こえていてもの耳に届く事はなかった。
「うぁ〜しょっぱなからあの質問は駄目だったか…
いや、でも気になってたし他に思い付かなかったし…ほとんどお話出来なかったよ…
救急箱持ってきたのに手当てもしてあげられなかった…」
明日又、コミュニケーション取ってみよう。
元就の機嫌も直ってくれたらいいのだが。
頭にたんこぶを何個か作り、目に涙を浮かべつつ頭をさすりながら再び自室へと戻ろうとした。
その時、政宗の部屋の前を通り掛かる。
明かりが付いている所を見るとまだ起きているようだ。
は小声で呼んでみた。
すると政宗のいくらか弱々しい声が返ってくる。
少し様子がおかしい。
「伊達ちゃん、どうしたの?入ってもいい?」
「あー…悪いが今は入って欲しくねえ」
珍しい。
いつもなら鼻血を出しながら部屋から飛び出してくる勢いなのに。
まさかとは思うが、戦の後に溜まった仕事をしている訳でもあるまい。
もしそんな事があれば、小十郎は嬉しさのあまりうっかりゲーム版に変身して大号泣するだろう。
気になって仕方なかったが、本人がそう言っているので
強引に障子を開ける訳にも行かず、は「お休み伊達ちゃん」と言ってその場を去ろうとした。
すると部屋から「…っつ!」と政宗がかすかに呻き、
それを聞いてしまったは血相を変え障子を勢いよく開けてしまった。
の目に飛び込んできたものは政宗の痛々しい姿。
腹部に包帯を巻いている。
「だっ、伊達ちゃん怪我してるー!?」
「馬鹿っでかい声出してんじゃねえ!」
しーっと口に人差し指をあてながらの口を慌てて塞ぐ。
口を塞がれたは「もがっ!」と間抜けな声を出す。
政宗の手は大きいので口だけでなく鼻まで覆われ、一瞬息が出来なくなった。
周囲に誰かいないかを確認すると政宗はを部屋に入れて障子を閉める。
「ぷはっ…もしかして親ちゃんのあの技受けた時…」
「んなもんかすり傷だ。すぐ治る」
強がっている政宗の腹を試しにつっついてみると奥州筆頭悶絶。
畳にゴロゴロと転がって痛みに必死に耐え、
最後は置いていた高そうなツボに頭を直撃、ごい〜んと鈍い音が部屋に鳴り渡る。
その姿はかなり情けないものだった。
ここに幸村や佐助がいればきっと笑い者にされるだろう。
よくよく考えてみれば、元親の「発破」を正面から喰らって平気な訳がない。
あの時、政宗は何事もなかったかのように勝負を続行していたが相当辛かったはずだ。
鎧だってその部分だけへこんでいたのだから。
「どうして言わなかったの!?包帯巻いただけじゃ治るものも治らないよ!」
「言ったら小十郎が色々とうるせえんだよ。昔似たような事があって大騒ぎになっちまったしな」
この時代では、現代程医療が発達している訳ではない。
ちょっとした傷でも細菌が入り、最悪の場合死に至る事もある。
それ故には政宗を放って置く事が出来なかった。
包帯で見えないが政宗が呻く位だから傷は相当なものだろう。
「私が手当てするから伊達ちゃんそこ座って!」
問答無用で政宗を座らせて傷の具合を見ようと包帯を解いてみるが傷はなかった。
てっきり血がだらだら出ているのかと思っていたが。
しかし内出血を起こしているらしく、その部分だけ肌が青く変色して腫れ上がっている。
幸い骨は折れていないようだった。
しかしはそれを見て1つだけ疑問に思う事があった。
それは…。
「…あのね、伊達ちゃん…1つ聞いてもいい?」
「何だ?」
「よくよく考えたら打撲なのに何で包帯巻いてるの?普通氷とかで冷やさない?」
政宗は黙ったままだった。
聞いてはいけなかったらしい。
表情からして「刀傷は日常茶飯事だけど、こんな事になったのは初めてだから対処法がよく分らなかった」みたいな感じだった。
大抵は攻撃を上手く受け流したりして怪我も最小限に抑えていたが、
相手が元親だったのでそうもいかなかったらしい。
流石に湿布なんて持っていないので氷で冷やす事位しか出来なかったが、
暫くは安静にしておいた方がいい。
小十郎にも一応怪我の事は言った方がいいだろう。
きっと明日になったら物凄い形相で「仕事しろ」と迫ってくるに違いないからだ。
一生懸命自分を心配してくれるを見て政宗は嬉しく思った。
「何笑ってるの、伊達ちゃん?」
「いや別に、それより、お前女が男の部屋に入る意味知ってるか?」
「…?…………!!!!!!?????///」
一瞬?を飛ばしたが、そこまで自分は鈍感ではない。
『逃げろ』
危険信号が脳内でこれでもかという位鳴り響き、その言葉が頭の中を駆け巡った。
「今回はうるせえ紅蓮の鬼と腹黒忍者も部屋で寝てるようだし、2人っきりだしなぁ?」
「なっななな何考えてるの伊達ちゃん!!!///怪我してるんだから大人しく寝てないと…!」
救急箱を持って慌てて退散しようとしたの腕を掴み、自分の胸に引き寄せようとしたその時だった。
グサグサグサッ!
言ってる傍から早速邪魔が入ってしまった。
上から苦無が飛んできて政宗の頭にクリーンヒット。
しかも苦無は1本だけじゃなかった。
天井から佐助がナイスタイミングと言わんばかりにひょっこり顔を出す。
顔は笑っているが、よくよく見ると苦無を握り締めている手が震えている。
今にも握り潰しそうな勢いだ。
心なしか副音声まで聞こえてくる。
「いや〜御免御免、当たっちゃった♪」
「てめっ…猿飛ぃぃぃ!!何でお前がここにいるんだよ!?」
「ちゃんは真田の旦那と同じく、寝相が悪いから布団蹴飛ばすんだよね〜。
だから俺様が風邪引かないようにといつも布団掛け直すんだけど、
行ったら部屋にいなかったからもしやと思ってさ〜」
「何がもしやと思ってだ」と良い所を邪魔されてしまい御立腹の政宗が反論する前に、佐助が先手を打った。
ドスッ。
蒼天疾駆・猿飛佐助、爽やかな笑顔で政宗の今の弱点であろう腹部に容赦なく拳を入れる。
政宗は声にならない声をあげて昇天してしまった。
走馬灯でも見えたのではないか。
「さぁ、あんな間抜けはほっといて早く寝よっ。今日は色々あって疲れたでしょ」
「あ…うん、いやでも伊達ちゃんが…
ほら泡吹いてるって、白目向いてるし…うわ痙攣し始めちゃったよ!?」
部屋に戻るようにとの背中を押す佐助は、
「大丈夫だって、変態はあれ位じゃ死なないから」と自信を持って答えた。
どうせ次の日になれば何事も無かったかのように復活するのだ。
「俺様んとこで寝る?あんな変態よりよっぽど安全だし」
「佐助ー!!!///」
「あはは、照れてる照れてる」
としてはどちらも安全ではない。
寧ろ佐助の方が色んな意味で危険な気がする。
何でかはよく分らないが、は本能で感じ取った。
普段は言う事もやる事もおかん丸出しのくせに、
時々こういう事を言うから佐助にはいつも驚かされる上に妙に意識してしまう。
顔がやたら熱い、きっと今の自分は真っ赤に違いない。
出来るだけ佐助に顔を見られないよう、下を向きながら廊下をズンズン歩き始めた。
右手と右足、左手と左足が同時に出ている事に全く気付いていない。
そんなを楽しそうに見つめながら後ろを付いていく佐助であった。
「おはよ〜…ってどうしたの皆?」
が起床した頃には皆は既に起きていて、しかも捕虜となった元親と元就も一緒の部屋にいた。
勿論、抵抗出来ないように縄で縛られているが。
武将が4人(幸村・政宗・元親・元就)、側近4人(佐助・伊達三傑)の勢揃いで何事かとビックリする。
どうやら瀬戸内コンビをどうするかで悩んでいるらしい。
宿老達からは「後々、禍根にならぬよう…」等と言われてはいるが、
そうなるとが悲しむと分っている政宗は葛藤していたのだ。
まだ寝ぼけ眼のは、ぼんやりとした頭でとある考えを思いつき、手を挙げて何気なくこう提案した。
「ねぇねぇ、皆は織田軍・豊臣軍を倒すのが目的なんでしょ?
だったら親ちゃんや毛ちゃんとも同盟組んだらどう?」
しばしそこにいた全員が考え込み、しんと静かになった。
は「あっ…何かマズイ事言ったかな私…」と内心焦ったが、そうではなかった。
もし、の言う通りにすれば戦力は倍以上に膨らむ上に、挟み撃ちだって出来る。
武田の騎馬隊・佐助率いる真田忍軍・伊達の双竜・元親の兵器・毛利の知略。
そして総大将とその側近達が色んな意味で最強だ。
言ってみた本人は本当に何気なく言っただけだった。
ただ、普通に「皆仲良くしたらそれでいいじゃない」みたいなノリで。
しかし、はふと重大な事に気付いてしまった。
歴史が変わっちゃうんじゃないかと。
そうなったら歴史の教科書の内容が改変される恐れがある(←それ以前の問題)
このメンバーで織田・豊臣を滅ぼした場合、本能寺の変や大坂・冬の陣の名前が消されそうだ。
更に勢い付いて徳川まで破れたら、征夷大将軍の名前が出てこない。
ついでに明智は信長に謀反が起こせず、「殺したくなーい!」等と叫びながら
発狂するんじゃないのか(←だから問題はそこではない)
皆が共闘して敵を倒すのはいい事なのだろうが、歴史が変わっては大変だ。
「ちょっ…ちょいストッーーーープ!!さっきの発言…」
「悪くはないな。貴様等と組むのは好かぬが…」
「俺はと一緒にいられるなら…とか言ってみ「おい誰かこの乙女つまみ出せ」
「何か変な事になっちゃったけど、あの魔王と覇王を早々に討てるなら別にいっか、
ここにいる全員、倒す敵は一緒だし、ねぇ旦那?」
「うおおおおおみぃぃぃなぁぁぁぎぃぃぃるぅぅぅ!!!」
「あぁぁ…聞いちゃいない…」
慌ててさっきの発言を取り消そうとしたが、時既に遅しだった…。
現代に戻った時、歴史の教科書を開いて見たら天下統一したのは、
かのほととぎすネタで有名なあの3人ではなく、
目の前で同盟を組んだ総大将の誰かになってるんじゃないかと。
それが元親だと笑えるのだが…。
姫若子時代の事が書かれようものなら爆笑モノである。
教科書に皆の名前が総出で書かれたら、それはそれで嬉しいと思うであった…。
NEXT
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教科書に皆の名前出てきたら授業テンションハイで受けられる上に、
勉強するのが楽しみになりそう、その部分だけ(笑)
ついに面と向かって2人とお話しました。
夢小説では夫婦じゃなかったですね!!(クワッ!)
よく考えたら初恋は幸村より元親の方が遅かったというオチ。
漫画版こじゅは政宗に厳しいけどゲーム版こじゅは何故か過保護になる、うん。
次回から新章に入る予定でございます。
さぁ誰を出そうかな。
ブラウザでお戻り下さい。