『第45話「新たな戦の幕開け」』
ある晴れた日、米沢城内の一画で2人の男の威勢のいい掛声と木刀同士がぶつかる独特の音が聞こえてきた。
右目に眼帯をした男の名は、伊達政宗。
伊達輝宗の長男として、この米沢城に生まれ18歳で家督を継ぎ
「奥州の覇王・独眼竜」と周囲から恐れられる伊達男である。
6本もの刀を操り、戦場を嵐の如く駆け抜ける男は彼位のものだろう。
常人では、とても真似事など出来ない。
そして、その政宗と激しい打ち合いをしているもう1人の男の名は片倉小十郎。
左頬に傷があり、厳しい目付きをしているのが特徴だ。
彼は、成実・綱元と同じく伊達三傑の1人であり、「竜の右目」と呼ばれている。
主君である政宗からは絶大なる信頼を得ており、背後の守りを任される程の剣の達人だ。
その2人が今、胴着に身を包み打ち合いをしている。
木刀とはいえ、気迫は戦場でのそれそのもの。
まるで敵武将と一騎打ちをしているようかのようだった。
政宗と小十郎は、しばし鍔迫り合いをしていたが、徐々に小十郎の方が押していき木刀で薙ぎ払った。
政宗は小十郎に押され間合いの外へと後退したが、すぐに木刀を構え直し、素早く小十郎に向って何度も打ち返す。
しかし小十郎は、その攻撃を的確に全て防ぎきり、隙をついて政宗に木刀を突き付けた。
木刀の切っ先は政宗の右頬に当たるか当たらないかの寸での所で止まる。
政宗は一瞬驚いたが、やがていつもの余裕綽綽の表情へと変わった。
対する小十郎も満足そうな笑みを浮かべている。
「強くなったな、小十郎。太刀筋が以前より鋭くなったじゃねぇか」
「恐れ入ります」
主君に褒められて嬉しく思うのだが、これで慢心してはいけない。
昔も今もそしてこれからも、政宗を守る為に自分は今以上に強くならなければならない。
精進せねばと改めて決意を固くする小十郎。
そんな小十郎の決意を悟ったのか政宗は「今後も楽しみだな」と内心思ったのだった。
パチパチパチ。
突然、政宗の背後から拍手の音が聞こえてきた。
振り向くと、いつの間にかが縁側に座って2人に向って拍手をしている。
「凄かった」と言わんばかりの尊敬の眼差しで(目が少女漫画のように輝いている)
お互い、打ち合いに集中し過ぎてが来た事に全く気付いていなかったらしい。
「殿!いつからそこに…」
「ついさっきだよ。成実ちゃんに案内して貰ってさ。
2人があんまりにも一生懸命だったから声掛けるの悪いかなって思って、ここで見てたの。
いきなり来ちゃって御免ね」
「いえ、そんな…政宗様もお喜びになられますよ」
「有難う!今日はこじゅさんゲーム版なんだね。
こじゅさんの胴衣姿、初めて見たけど…その…カッコいいね///凛々しいって言うか…うん」
「そうですか?普通だと思いますが…」
小十郎は、自分の胴衣姿を見て不思議そうに言う。
「や、こじゅさんだから似合うというか…」
は先程よりも小さな声でボソッと呟いた。
「は?今何と?申し訳ありません、もう1度…」
「あややややや、何でもないんですっ気にしないで下さい!!」
その時、バキーン!!と何かのゲージが溜まる音がした。
恐る恐る後ろを振り向くと、何処から出したのか6本の木刀を持った修羅・政宗が…。
小十郎にはの言葉が聞こえなかったようだが、政宗にはちゃっかり聞こえていたらしい。
「さ〜て今度は本気で行くとするか…」
「なっ何故そんな殺気を振りまいておられるのですか!?」
凶悪な笑みを浮かべ殺気を隠そうともしない政宗を見て流石の小十郎も焦る。
じりじりと距離を詰めてくるのが余計怖い。
自分は何か気に触るような事でもしたのだろうかと、しきりに?を飛ばすばかりだ。
その現場を偶然通り掛かった綱元が目撃し、心の中で「哀れな…」と呟いたそうな。
その後、が慌てて政宗を止めたので小十郎は無事だったが…。
政宗の嫉妬深さと大人気ない所は相変わらずである。
「ちっ、まぁいい。ところで…あいつらはどうした?」
「あいつら?」
「真田幸村と猿飛佐助。今日はいねえのか?」
そう言って政宗はキョロキョロと周囲を見回していた。
勿論、警戒の意味も込めて。
いつもの傍にいるあの2人がいないなんておかしい。
あの2人の事だ、自分とを2人にしておく訳がない。
何かの罠かとさえ思っていた。
そんな政宗の思考に全く気付く事なく、も相変わらず能天気に答える。
「さっきまでいたんだけど用事があるから一旦甲斐に戻ったの。
何か、お館様が武田道場建設するから手伝えとか何とか…帰る時は又、迎えに来てくれるみたい。
何かすっごい形相で言ってたけど…」
「Ha!…邪魔者がいなくて好都合だ」
「伊達ちゃん…あの…鼻血出てるよ?」
人には言えないような破廉恥な事を次々と考えては鼻血を出し続ける奥州筆頭。
の言葉すら全く聞こえていないらしい。
変態なところも相変わらずのようだ…。
その様子を隣で見ていた小十郎は嫌な汗が噴き出て止まらない。
良からぬ事を考えて政宗が何かと騒動を起こすのは目に見えているからだ。
そう思っているのは、ここにいる小十郎だけではないのだが…。
最終的にそれを何とかするのは、きっと自分なのだと半ば遠い目をして溜息をついた。
そして、いつまで経っても、こっちの世界に戻ってこない主君に一喝する為、固有技・鳴神を放った。
こういう容赦のない所は、漫画版とあまり変わらないらしい。
無防備だった政宗は、危うく城外にまで吹き飛ばされそうになった。
「政宗様!奥州筆頭たる者、そのような醜態を曝していては兵の士気も下がりますぞ!」
「Oh…ヤベヤベ、の事になるとつい、な…」
「つい」でここまでなってしまうと、もはやそれは重症である。
身体中ボロボロになってはいるものの、まるで何事もなかったかのように復活するところが又恐ろしい。
もしかしたら、この男は本当に不死身なのかもしれない…。
政宗は転がった自分の木刀を拾い、小十郎に向って投げるとの手を取り、屋敷へと歩き始めた。
「小十郎、俺はにちぃっとばかし話がある。後は宜しく頼むぜ」
「それは構いませんが、この前のように乱心だけはなさらぬよう…」
「Of course!…と言いたい所だが、こいつの返答次第だな」
「え?私の返答がどうしたの?」
は訳が分からず、しきりに?を飛ばしたまま、政宗に連れて行かれてしまう。
小十郎は、2人の後姿をしばし見つめていたのだった。
「話って何、伊達ちゃん?」
「お前、俺に内緒で、あいつらと祭行ったんだってなぁ?しかも、あろう事か瀬戸内の奴等とも一緒だったらしいなあ!?」
部屋に入るやいなや、「怒髪天」の文字が今にも見えそうな勢いでに迫る。
そんな政宗の迫力に押されたのか、も後退せざるを得なかった。
としては京の祭について別に内緒にしていた訳ではないし、元親や元就とは偶然あそこで会っただけである。
きっと、自分だけ皆と祭に行ってなかったので寂しかったのだとは勝手に解釈していたが、実はそうではなかった。
政宗の怒りの原因、それは西海の鬼・長曾我部元親から送られてきた1通の文だった(しかも文の色が桜色)
そこに書かれていた内容は、「と一緒に祭に行ってきたんだぜ☆良いだろー羨ましいだろー!」という自慢話のオンパレード。
の浴衣姿や自分に抱きついてきた時の笑顔が超可愛かっただのと
他人が見たら「ぅわ、鬱陶しいー!!」と思うような事ばかり延々と書かれてあった。
それだけでも政宗の怒りを煽るというのに、あろう事か最後の文章がトドメを刺した。
『はぐれてる間にと就ちゃんがやたら仲良くなってて、気になって何があったのか聞いてみたら
「さぁな」って凶悪な笑みを浮かべて答えやがったんだけど、お前はどう思う?』
この文章を読んだ瞬間、政宗は言わずもがな御乱心。
「どう思う」…だと?
そんなの何かあったからに決まってるじゃねえか!!
「あの狐がぁぁぁぁ!!!」と天守に雷が落ちる程怒り狂い、小十郎達に止められたのは言うまでもない。
勿論、止めに入った伊達軍の面々もただでは済まなかったのだが…。
そんな文を読んで政宗が怒っている事など目の前にいるは露知らず。
完璧、誘ってくれなかった事に怒っているとばかり思っていたのだった。
「親ちゃん達とは現地でバッタリ会っただけだよ?
そっか…あの時いなかったの伊達ちゃんだけだったし、そりゃ寂しいよね。
怒るのも当然か…御免、今度は一緒にお祭行こうね!(…そういや伊達ちゃん、お祭行った事何で知ってるんだろう…)」
「俺が怒ってるっつーか心配してんのは、そんな事じゃねえよ…」
「えっ違うの!?てか何の心配!?」
「…祭であいつらとはぐれてた時、元就と何があった?」
「へ?」
何があった…と言われても。
「正直に言わねえとただじゃおかねえ」と言わんばかりの表情にも冷や汗が止まらない。
しかし何があったかと言えば特に何も…。
…
いや…色々あったかもしれない。
とりあえず、思い付く限りの事を政宗に言ってみた。
「えーと…折角見つけたと思ったら毛ちゃんが怒って付いて来なかったり
町の人達に見られる中、罵声の浴びせ愛したり腐女子発言したら怒られたり……とか?」
「質問を質問で返すなよ…元就に、何かやらしい事されなかったか?」
「うん、てか毛ちゃんがそんな事する訳ないない、絶対ない!!」
「心配させんじゃねえよ…ったく」
の両肩を持って盛大に溜息をつきガクーッと項垂れる政宗。
てっきり、あんな事やこんな事されてると思っていただけに余計脱力感が押し寄せてくる。
よくよく考えてみれば万が一、が元就にそんな事をされたとして、それでどうやって仲良くなると言うのだろうか…。
政宗の思考が余程、パニックを起こしていたかが手に取るように分かる。
対するは、政宗の様子を恐る恐る窺っている。
「伊達ちゃん…もう怒ってない?」
「あぁ怒ってねえよ…ただ、俺に心配かけさせた詫び位は入れて貰わねえとなぁ?」
「詫びって…のあぁぁあああ!?何してんの伊達ちゃん!?」
「もちっと色気のある声出せねえのか、お前は…;;」
無防備なを押し倒して抵抗出来ないように抑えつけるものの、その手付きは何処か優しかった。
「悪ぃな、お前の事となると余裕ってもんがなくなるんだ」
は、どうしていいか分からず抵抗する事も忘れて固まっているばかりだった。
終いには眼に涙がわずかながら浮かび上がっている。
その様子に政宗も苦笑するしかなかった。
「今からそんなんじゃ、この先身が持たねえぜ?」
耳元で、そう言われはもう色んな意味で限界寸前。
が…お楽しみのところ、やはり邪魔は入る訳で…。
遠くから誰かの足音がしたと思うと、それはどんどん近付いてきて終いには、いきなり障子が勢いよく開いた。
「大変です政宗様!松永久秀と名乗る者が斥候を人質に…って何をやっておられるのですかぁぁぁ!?」
「何って夫婦の営みに決まってんだろ。てーか、これからって時に邪魔しやがって…チッ!!!」
「盛大に舌打ちすんなワレェェェ!!!」
又しても政宗を容赦なく固有技で吹っ飛ばす小十郎。
今度は極殺モードでスペシャルサービスしたようだ。
半泣き状態のを慌てて抱き起こし、不器用ながら涙を拭ってやる。
「こんな日も高い内から全く…大丈夫ですか殿!?」
「ふぇ…助かりました〜」
涙で潤んだ瞳。
ほんのり桜色に染まった頬。
今まで見た事のないの表情を真正面から見てしまい、流石の小十郎も顔を赤面、片手で顔を隠し俯いた。
いつも明るく誰に対しても無邪気な笑顔を振りまく純粋な女子も、時にはこんな顔をするのか…。
将来、政宗の奥方になるかもしれない女性に小十郎は不覚にも欲情してしまったようだ。
そんな己を心の中で叱咤する。
そして、やっぱりすぐに復活した政宗は、小十郎の表情を見てニヤニヤしていた。
「可愛いだろ?襲うなよ」
「襲っ…!!その言葉、そっくりそのまま政宗様にお返し致します!」
「何ムキになってんだよ、冗談だ。ほーら、お前もいつまでんな顔してんだ。俺以外に見せんな」
「わきゃあああ!!!見ないでえええ!!!」
は政宗の顔を見た途端、赤面し両手で突き飛ばした。
政宗は又しても勢いよく吹き飛んでしまう。
何やら部屋の色々な物に当たったようで派手な破壊音が部屋中に響き渡った。
「それで…その松永は斥候を人質にして何を要求してやがる?」
「(壺の破片が刺さってます政宗様…)あ、はい、竜の宝、そして…松永は殿も連れて来いと…」
「Ah!?」
「へ?あたし!?何で何で!?」
竜の宝である無限六爪流を松永が狙っているのは知っているが、何故自分まで指名されたのかには全く分からない。
隣にいた政宗は、松永が宝だけでなくを狙う理由が何となく解ったのか、再度舌打ちをしていた。
どうしてこうもを狙う輩が多いのだと内心毒づく。
「小十郎…Are you ready?」
「承知」
2人は、すぐに戦の支度をし始める。
平和だった日々が松永という男に突然壊され、新たな戦が今まさに始まろうとしていた。
一方その頃、甲斐では…。
「何でよりにもよって、こんな時に道場建設の手伝いなんてしなきゃならないんですか大将ー!!」
「こんな事してる間に殿が独眼竜に喰われてしまうかもしれませぬぞ!!」
幸村と佐助が信玄に物凄い剣幕で文句を言っていたのだった…。
NEXT
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ムービーしょっぱなから政宗と小十郎の胴着姿に激しく萌えましたよー!
普段ゲームでお目にかかれない姿ですからね、貴重というか何というかvvv
どうしてこうも小十郎ストーリーモードって萌え所が多いんでしょう(笑)
楽しくて堪りませんでしたvvv
松ちゃんは次回、登場予定であります。
ブラウザでお戻り下さい。