『第48話「不思議な力を持つ娘」』
襲い掛かる松永の兵を薙ぎ倒しながら氷の洞窟を抜け、ようやく囚われている斥候の元へと辿り着いた双竜と。
ここでいきなり松永と戦闘になるかと思いきや、
この戦の諸悪の根源は自分の側近達に押し潰されて、みっともない醜態を晒していた。
じたばたともがく男の姿を見て政宗達は一気に戦う気が削げたのは言うまでもない。
飛んできた三好三兄弟を端の端へと乱暴に追いやり、まるで何事もなかったかのように振る舞う松永。
だが彼も人の子なのだろう。
恥ずかしいのか、少々顔が赤くなっている。
それに気付いた政宗は、ますますやる気が削げてしまった。
目なんて執務をして完徹した時のように死んでいる。
松永は軽く咳払いし、政宗達に話しかけた。
「やぁ独眼竜とその右目、よく来たな。待ちくたびれたよ。」
「てめぇ…自分のした事が分かってねえようだな」
「ふっ…そいつは失敬」
仲間を人質に取った男を前に怒りを露わにする小十郎。
全身から殺気を漂わせ、今にも松永を一刀両断にしてしまいそうな勢いである。
しかし松永は己に向けられる殺気をものともせず、2人を小馬鹿にするかのように見ていた。
まさに一触即発といったところだろうか、2人の後ろに立っていたも緊張せざるを得ない。
圧迫した、それでいて重苦しい空気に息が詰まりそうだ。
「(ぅわぁゲームと同じだ…これってそのまま行けば確か真正面にいる斥候の人が…)」
人取橋の戦いをゲームでプレイしていたの記憶が正しければ、
斥候を磔にした柱を支えている縄が松永に斬られ、1人は崖に転落したはずだ。
だが、そんな事態になる事を政宗達は知る由もない。
会話からして縄が斬られるのは、間もなくだ。
2人に教える暇もないこの状況では助けられるのは、この先を知っている自分だけ。
松永の次の言葉が発せられると同時には無我夢中で斥候の元へと走り出した。
突然のの行動に政宗達は目を見開く。
「なっ!?何する気だ、おまっ…」
「これで勘弁してくれたまえ」
「そうは…させないんだからー!!!」
政宗が叫ぶ声と松永の声がほぼ同時に発せられる。
瞬間、ブチッと縄が切れる音がした。
松永は持っていた刀を一振りし、柱を支えていた1本の縄を切ったのだ。
「ヒィィ、助けてくれー!!!」
紙一重の差で松永を止める事が出来なかった。
が、しかし今ならまだ間に合う…!!
「死なせたくない」というの気持ちに呼応するかのように体から力が湧いてきた。
支えていた縄が切れるやいなや、そのまま柱は傾き斥候は悲鳴を上げながら
崖から転落…するかのように思われた。
だが、それよりも早くは例の力を発動させる。
御存じ、ピンチの時のの十八番「火事場の馬鹿力」。
切れた縄を間一髪で掴み、思いっきり踏ん張って柱を崖から落とすまいと必死の。
普通の人間ならば不可能なこの光景に2人は驚愕したままだった。
唯一、松永だけは関心したような目を向けていたが。
「ふんぬ――――!!!」
縄を掴む掌が痛む。
うっかり気を抜けば自分も一緒に崖へ落ちそうだ。
覚悟はしていたが流石にこれはいくらなんでも重過ぎる。
出来れば縄を切られる前に助けたかったが…。
自分1人で傾いた柱を元に戻すには馬鹿力を持ってしても正直キツかったが
幸村のように気合で何とか乗り切ろうとする。
慌てての元へ駆け寄ろうとしたその瞬間、「来ちゃ駄目っ!」と2人を制止した。
自分のすぐ隣には松永がいる、2人が来れば何か仕掛けてくるに違いない。
それにしても松永は何故自分に対して何もしてこないのだろうか。
斥候を崖から落とすのを阻止しているのに見ているだけとは…。
には松永の考えている事が全く理解出来なかった。
だが、逆にこれは好機である。
は更に力を集中させて両腕に力を込めた。
傾いていた柱は徐々に元通りになり、ゆっくりと地面へと横たわらせる。
ズズゥゥゥンという重い音が振動と共に辺りに響く。
間一髪で助かった斥候は泣きながらに礼を叫んでいた。
(あぁ…何だか自分がどんどん怪力女になっていく…)
心なしか、この時代に来た時よりも馬鹿力が強くなっているような…それでいて少しずつだが使いこなしてきているような…。
そんな事を思いながらホロリと涙しつつも、死ぬ運命だった斥候の命が助かりホッとした事の方が大きかった。
しかし、力を使い果たしてしまったのか途端に脱力感が全身を襲い、は立つ事すら出来なくなった。
その場にドサッと力なく倒れてしまう。
力を使った後に、指1つ動かせなくなってしまったのは初めての事だった。
「え…何これ…!?ちょっタンマっ…(動けないよー!!)」
松永の目の前でまさかのこの状態、完全に無防備だった。
今ここで斬りかかられたら一溜まりもない。
対する松永はをまるで面白いものを見るかのような目で見降ろしながら、ゆっくりと近づいてきた。
政宗は「それ以上、に近づくんじゃねえ!」と叫ぶが、聞く耳持たず。
マグナムステップで松永を吹き飛ばそうかと一瞬考えたが、2人の距離があまりに近すぎるので、
下手すればをも巻き込むかもしれない恐れがあった。
もし松永がに斬りかかろうとするならば、この身を挺してでも守るつもりだが。
それは小十郎とて同じ気持ちだった。
目の前に立つ松永には内心冷汗が止まらなかったが精一杯の虚勢を張って彼を睨みつける。
と言っても、さして怖い感じはあまり出ていなかったが…。
やがて松永はうつ伏せで倒れているの顎をクイッと軽く持ち上げると顔を近づけ呟いた。
「いやぁ、お見事だったよ。噂通りと言ったところか」
「…噂?何の事?」
「桶狭間の近くに現れた不思議な力を持つ娘の噂だ。戦場では思わぬ力を発揮したり
色々な武将達に同盟を組ませてみたりと何かと影響を与えているそうじゃないか。
武田に定住しているそうだが、今は奥州にいると聞いてね。
是非1度会ってみたいと思ったのだよ。何せあの奥州独眼竜を魅了した女だ」
「私は…会いたくなかった…けどねっ…!!
(や、でもちょっぴり見てみたかったような…いやいやそんなまさか望月さんならともかく、こんな爆弾魔なんかにっ…!!)」
「気の強い娘だ、君の顔が恐怖で歪む所を見てみたいね」
この言葉にの体に悪寒が走る。
(こっこっこっ…この人やっぱりドSだー!!!)
ヒィィと内心半泣き状態になりながら盛大にツッコんだ。
彼ならやりかねない、否絶対やる気だ。
松永は、元来そういう男なのだから。
の松永に対する恐怖がピークに達したその時、隙だらけだった彼に攻撃を仕掛ける政宗。
どうやら松永の言動に我慢の限界だったらしい、顔が極殺モードの小十郎よりも怖い事になっていた(斥候談)
先程はに当たってしまうかもしれないという心配があって攻撃出来なかったものの、
器用に威力を少しだけ下げてピンポイントで松永だけを狙っている。
しかし、政宗の攻撃は惜しくも防がれてしまう、驚く事に片手だけで。
「shit!」
政宗は心底悔しげに舌打ちする。
その隙に小十郎はを松永から引き離す事に成功した。
「私は今、この娘と話をしているんだ。邪魔をしないでくれるか、独眼竜」
「Ha!汚ねー手でに触れるんじゃねえよ、おっさん!そいつを啼かせていいのは俺だけだ、you see!?」
(今まで鼻血ばっかり吹いてたからすっかり忘れてたけど、
そんな伊達ちゃんもドSだったー!!)
何だか松永よりも政宗の方が危険度が高く感じるのは気のせいだろうか。
政宗の後ろにいた小十郎は、ふとそう思った。
や斥候達も同じ事を思ったのは言うまでもない。
「卿は余程その娘が気に入ったらしいな、ますます欲しくなったよ。そうそう本題に入るが、約束の物は持って来てくれたかね」
「悪いが、その話は飲めねえな。竜の宝ももあんたなんかに渡す気は毛頭ねぇ、
人質は返して貰うぜ、ついでにあんたにゃあここで消えて貰う…行くぜ小十郎!」
「承知!」
NEXT
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お待たせしました、48話目完成です!
久々の更新…!!(><)
残念ながら人取橋ラストのとこまで行けませんでした…;;
相変わらずのへたれ文章です;;
ブラウザでお戻り下さい。