『第50話「俺の青春返して下さい」』
「伊達ちゃ―――――ん!!!」
「政宗様!」
一瞬何が起きたのか分からなかった。
派手に爆音が鳴ったと思いきや俺の体はあっけなく爆風に吹き飛ばされ、
気付けば崖下へと墜ちていった。
小十郎や人質になっている仲間達が俺の名前を呼ぶ声がわずかだが聞こえた。
当然、の今にも泣きそうな声も。
わりぃ…俺とした事がヘマしちまったぜ…。
あいつを倒して全員で城に帰るつもりだったのによぉ。
こりゃあ幸村や猿飛に知られたら確実に殺され…る…な…はは…。
Shit…意識が…薄れ…て………。
「…ちゃん」
Ah?
「だ…ちゃん!」
誰だ、この声…ちっとは静かに出来ねえのかよ…
「伊達ちゃん!!」
待てよ…この呼び方する奴は…もしや…
「伊達ちゃん起っきろー!!」
「ぉわっ!?…?」
「おはよう伊達ちゃん!さっきから何回大声で呼んでも全然目覚まさないから心配したんだよ?」
吹き飛ばされ崖下へと墜ちていった政宗は落下途中に気絶してしまった。
そして再び目を覚ました彼の目に飛び込んで来たのは、
力を使い果たして身動きが取れないはずのの姿だった。
しかも脱力して苦しそうな様子は全く見受けられない。
いつもの明るくて元気ハツラツの、普段と何ら変わらない姿だ。
彼女はなかなか起きない自分を起こす為に布団をひっぺ返していたらしい。
そして次に目に入ったのは自分が今いる場所だ。
先程まで政宗は小十郎と共に松永と対峙していた、そして仕掛けられていた罠によって崖下へと落ちてしまった。
だが今、彼の眼に映っているのは血生臭い戦場ではなく、住み慣れた城の一角にある自分の部屋。
静かな部屋に聞こえてくる小鳥達のさえずり、
障子の隙間からは陽の光がわずかに射し部屋を照らす、これもいつもの光景だ。
一変したこの状況に流石の政宗も戸惑いを隠せなかった。
「何でお前がここに…俺は崖下に落ちたはず…」
「???何言ってるの伊達ちゃん、あっ分かったー。
もしかして馬に乗って崖からダイブしたら失敗しちゃった夢でも見たんでしょ?な〜んて!!」
「dream…か?」
あれは夢だったのだろうか?
斥候が人質に取られた事も、小十郎と一緒に戦っていた事も、
自分が竜の爪を差し出した事も、松永という男の存在さえも全部…全部。
いや、寧ろ今目の前に広がっているこの光景が夢なのではないだろうか。
頭がぼんやりするせいか思考が上手く働かない。
起きぬけの割には変に頭の中が霞がかったような感じがして政宗は違和感を覚えた。
いつもと違う彼の様子にが心配そうな顔付きで覗いてきた。
「伊達ちゃん…顔色悪いみたいだけど大丈夫?何か元気ないね」
「んな事ぁねえよ、俺は大丈夫だ。それよか、さっきから気になってたんだが…その格好は何だ?」
「これ?」
最初こそ状況把握に精一杯だったせいで全くツッコむ余裕もなかったが、
政宗はの今着ている服が物凄く気になった。
普段の彼女は、この時代に似つかわしくない変わった軽装、「制服」というものを着用している。
だが、今目の前にいるの姿は普段と全く違う。
何と言うか…輿入れ前の何処ぞの姫君のような格好だ。
子供のように元気いっぱいに飛びまわっているいつものおてんばなとは又一味違い、
今日は何だか大人の女性の雰囲気を醸し出していた。
「伊達ちゃん、今日何の日か忘れちゃったの?」
「Ah?今日?」
の問いに政宗は腕を組みつつ考えた。
がこのような格好をしているのだ、今日は何か特別な祭事でもある日なのだろうか?
と言うか今日が何日なのか暦すら分からない。
なかなか答えてくれない政宗に痺れを切らしたは顔を赤らめながら少々怒ったように答えを言った。
「きょ…今日は私…伊達ちゃんとこにお嫁に行く日なんだよ!」
「ほぉ…そうか、お前が嫁に……………」
何だって?
の爆弾投下に、うっかり左目が飛び出しそうになった。
思考回路もフリーズ寸前。
まさか。
あのが。
伊達家に輿入れ!!??
嬉しい事だが、これは確実に夢に違いない。
何故ならが伊達家に輿入れなど、あのおかんを筆頭に暑苦しい武将とか
乙女な海賊とかオクラの妖精が許すはずがないからだ。
彼らの事だ、何が何でも妨害してくるに違いない。
例えどんな手を使ってでも全力で邪魔してくるはずだ。
にわかに信じ難かったが次のの言葉でそんな考えも吹き飛んでしまった。
「ふつつか者ですが宜しくお願い…します///」
「OK、!幸せにしてやるからな!!」
政宗は嬉しさのあまりを思いっきり抱きしめた。
熱烈な抱擁には照れながらも政宗の背中にそっと腕を回す。
何だかんだで邪魔が入ったりして良い雰囲気に持ち込めなかった政宗は今この上なく幸せだった。
鼻血を出し過ぎて軽く死ねると思う位に幸せだった。
…のだが…。
「政宗様…お放し下され!!」
「ぎゃああああああああ!!!!!!」
突如、自分の名前を呼ぶ男の声が聞こえて何事かと目を開けると目の前に広がったのは
先程まで自分の腕の中にいた愛しいの照れ顔ではなく、
ヤクザを思わせるような険しい顔をした男のドアップだった。
よく見ると何と自分は、その男に抱きついているではないか。
傍から見たら誤解されかねない超絶危険な光景である。
「What!?こっ小十郎…てめっ…何でお前が抱きついてんだよ!?
いくら主君が大切だからってなぁ!俺に抱きついていいのはだけだyou see!?
返せ俺の青春!!」
「青しゅ…何を寝ぼけた事を言っておられるのですか政宗様!貴方の方から抱きついてきたのですぞ!
しかもがっちりホールドかけられて逃げるに逃げられない!(吐血)
それに貴方の青春は鼻血を出した時点で既に終わっております!」
「好きな女、目の前にして鼻血出して何が悪い!!てか勝手に俺の青春終わらせんじゃねえ!!
後もう少しでと夫婦の契りを交わす所だったんだぞ!!」
後一歩の所でお前が叫ぶから…!!と心底悔しそうにする満身創痍の主君にプチ激昂しそうになった小十郎。
もうこれからは何があっても心配などしてやるもんかと心に固く誓った。
そんな事を思いつつも主君思いの彼の事だ。
次に似たような事があっても今回と同じような行動を起こすだろう。
例え主君が鼻血を出そうが、妄想しようが、好きな女子にセクハラ行為をしようが
(例を上げてみるとと出会ってから政宗はロクな行動を起こしていない)
自分が信じて付いていこうと思った男なのだから。
「…ごほっ、とりあえず目を覚まされて、この小十郎安心致しました。ここ数日間、ピクリともなさらなかったので…」
「数日間?ちょっと待て…や仲間はどうした?」
「はっ政宗様が爆発を喰らって意識不明の重体であった為、
状況不利と見て一度奥州へと戻りました。殿や仲間達は…松永に捕らえられたまま…」
「…!あいつらを見捨てて帰って来たってのか!?」
「………」
決して見捨てて帰ってきた訳ではない。
出来る事なら、皆を助けて帰りたかった。
ただ、先程も言った通り状況が悪過ぎる、2人がかりで戦って苦戦した相手だ、おまけに主君は爆発で意識不明。
一度体制を立て直す為にも、天下を目指す彼をここで失わない為にもあの時は一旦奥州へと戻らざるを得なかった。
あのまま無茶をしていたら、どうなっていた事か。
政宗は小十郎の言葉を聞くや否や、みるみる表情が険しくなっていく。
殺気とも怒気とも言えるものがひしひしと伝わってくる、そんな政宗に小十郎はただただ押し黙っているのみだった。
自分の取った行動に政宗が怒るのは重々承知の上、覚悟も当に出来ていた。
そして政宗が目を覚ました後、奪われた宝、そして大事な者達を助けるべく単身松永の元へ行く事も―――。
NEXT
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前回まさかのギャグ全くナッシンだったので今回はしょっぱなから入れてみました。
ただ前置きが長すぎる仕様…(爆死)
双竜一騎討ち篇予定でしたが行けませんでした。
うちの政宗の青春は色んな意味で終わってる気がします(苦笑)
どうしてアニメやゲームのようにカッコよくならないのだろうか
何故事ある毎に鼻血を出す!?(それはお前のせいだろ)
てか記念すべき50話目がこんなのでいいのだろうか!?(*T∀T*)/オワタ!!
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