タイトル『第53話「長谷堂に舞い降りる風魔の影」』
「ちょっぴり淡い期待を込めて皆に質問!ここって長谷堂じゃないよね!?ねっ!?」
「あの建物を見るに間違いなく長谷堂だね」
「「「長谷堂ッス姐さん!」」」
「ぃやぁぁああああ!誰か嘘だと言ってえぇえ!!」
霧がますます深くなり、視界が更に悪くなる長谷堂での悲鳴が盛大に響き渡る。
別にあの伝説の忍が自分達を追い掛けてきているという絶対の確証はないとはいえ、
ゲームをプレイし、その結末を知っているだけにの不安が払拭される事はなかった。
あの松永の事だ、もう既に追っ手を差し向けている頃だろう。
妖しい霧が出ている辺り、自分達を待ち伏せしている可能性も高い。
ふと2頭身の松永が「ホッホッホッ、欲しがれば良いのだよ」等と言いながら笑っている姿が脳裏に浮かんだ。
最も、彼はこんな笑い方はしないだろうが。
「まぁまぁ落ち着きなよちゃん。長谷堂経由する事になっちゃったけど、ちゃんと帰れるからさ」
「そっ、その長谷堂を通る事自体に問題大アリなんでございまするよ、なるみちゃん!」
「どうして?あぁ霧が心配?大丈夫だよ、いつか晴れるって♪」
「人の事言えないけど脳天気にも程があるー!この霧もしかしたら風魔の仕業かもしれないんだよ!」
「風魔」という言葉に斥候達が固まった。
先程まで笑っていた成実の表情もわずかに曇る。
風魔は北条家に代々仕える忍者集団。
そしてその忍者達を束ねる棟梁が、かの有名な風魔小太郎だ。
だが彼を見た者は一人もおらず、実際にこの世に実在するのかどうかも怪しい存在。
一説によると姿を見た者は例え女子供だろうと容赦無く斬り捨てるらしい。
ゲームでは、あの佐助やかすがでさえ2人がかりで戦っても苦戦する程の危険人物だ。
ひと度遭遇すれば自分なんか瞬きする暇もなく殺されるだろう。
彼は今何処に潜んでいるか分からない、もしかしたら近くにいるかもしれない。
そう考えると、えもいわれぬ恐怖感がを襲う。
幸い1人じゃないのが心強い、自分には成実や斥候達がいる。
もし1人でこの状況に対面していたら、どうなるか分かったものじゃない。
色々思考を巡らせていたに成実が質問を投げかけた。
「ちゃん、1つ聞いてもいいかな?」
「はい、何でございますか」
「どうして、この霧が風魔の仕業だって分かるんだい?」
「え…」
「そういやそうっスねぇ、何で分かったんスか? 姐さん」
ギク―――ッ!
ししししまった…
この状況に焦って思わず「風魔」って言っちゃったけど皆この先の事なんて知らないんだよね!!
そりゃあ疑問持たれるはずだよ、どうする自分!!
えーとえーと何て答えよう…「…勘?なんちゃってーあはははは♪」とか何とか言って笑って誤魔化してみる?
…こじゅさんだったら絶対通用しないだろうな…コレ…。
「何でやねん!」と即座にツッコまれそうなのは覚悟の上。
「えっとね、勘…」
滝のような汗を流しながらが駄目元で「勘」と答えようとしたその時…
彼女の目に嫌なものが映り、思わず指をさしながら絶叫した。
「じゃない!!!いた――――!!!」
何処かで見た事のある赤と黒の装束を纏った一人の忍が岩壁の上で印を結び、
何やらお経のような妖しい呪文を唱えていた。
そして次々に姿を現した仲間の忍達、呪文を唱える声が少しずつ増えていく。
その声は頭の中にまで響いてくるような…それでいて不快なものだった。
やがて不気味な呪文に呼応するかの如く辺りが暗くなり、上空からはゴロゴロと雷が鳴り始める。
どうやら「風魔術式・闇殺」を使ったようだ。
これは本格的にマズい状況となった。
捕えられた際、武器を取り上げられた斥候達は丸腰同然。
流石にこれには不安の方が勝ったのか、いつもの伊達軍独特の勢いがない。
しかし三傑一好戦的な成実だけは他の皆とは違い、楽しそうな表情を見せる。
「敵が多ければ多い程燃えちゃうんだよね俺♪」
「ぃやそこは燃えずに逃げましょうよ!これだけの数となると俺達だけじゃ無理ですぜ!」
「安心しなよ、道は俺が作る。そんじょそこらの忍に
この成実様が倒せないって事を分からせてやるさ。さぁ一気に行くぜ!」
「今回ばかりは【一気に逝く】の間違いじゃありませんか、なるみちゃーん!!」
強行突破を図った成実の後ろを付いていくしかない達。
岩壁で呪文を唱えていた忍達は煙と共に次々と現れ、成実達の前に立ちはだかり、攻撃を仕掛けてくる。
しかし、忍特有のすばやく捉え辛い動き、そして数をものともせず、成実は1人で次々と敵を薙ぎ倒していく。
成実が戦っている所を初めて目にしたは、ただただ「凄い」と驚嘆していた。
流石は政宗を支える伊達三傑一の「武」の猛将。
勇猛果敢に攻めるその姿は政宗や小十郎に負けず劣らずの「竜」の力を見せる。
成実の武勇を見て、今まで及び腰だった斥候達も奮起したらしい。
まるで高速道路を爆走する暴走族の如き勢いで忍達相手に拳で応戦し始めた。
プロレス技までキメられ、それでも立ち上がろうとする敵にはが最後に我武者羅にポコポコ叩いて気絶させていた。
あまり必死になり過ぎると、うっかり例の技が発動して一撃で頭をかち割りそうなので力はちゃんとセーブしておく。
そんなこんなで、あっという間に第壱の門を破り、次の門を目指す一行。
しかし、ここでも忍達の「闇殺」が達の行く手を阻む。
今度は天候が悪くなるばかりか視界も更に悪くなり、おまけに忍の数も先程より増えている。
いくら倒しても無尽蔵に湧き上がる敵に流石の成実達も苦戦を強いられる。
「くそっどうなってんだ!?倒しても倒しても出てきやがる!」
「成実ちゃん、この闇殺を破る方法が1つだけあるの!
この忍達の中に忍者頭ってのがいて、そいつを倒せば…!」
「忍者頭!?」
と言っても周りは黒ずくめの忍だらけ、皆同じ装束なだけにどれが頭なのかよく分からない。
が周りを見回し、誰が頭なのかを必死で探す。
すると他の者とは微妙に違う色の忍装束を着た1人の忍の姿が彼女の目にとまった。
「あーっ!!いたいたあいつ、あの赤と黒の忍装束着たあいつ!!」
しかし気付くのが少々遅かったようで、忍者頭は火遁の術を今まさに成実達めがけて放たれようとしていた。
避けられないと思った成実は、や斥候達に敵の攻撃が当たらぬよう身を挺して庇おうとする。
「成実ちゃん!」
「「「成実様!!」」」
が「危ない!」と叫ぶ暇もなく、忍者頭から火の玉が幾重にも放たれた。
そしてそれが成実の背中に直撃しようとしたその時。
何者かが成実達の前に飛び出し、蒼い稲妻を纏った刀でいとも容易く敵の攻撃を防いだばかりか、
次の瞬間繰り出された斬撃が忍者頭を一刀両断にした。
忍者頭がやられたのと同時に、周囲に群がっていた忍達も嘘のように消えていく。
成実は自分達を守ってくれた相手の姿を見るや深く安堵のため息をついた。
「ふぃ〜危ない所だったー!助かったぜ小十郎」
「「「小十郎様―!!」」」
「え?こじゅ…?」
攻撃が迫ってくる、そして死ぬかもしれないという恐怖感ゆえに思わず目を瞑ってしまっただったが
「小十郎」と聞いてパチッとその大きな両目を開ける。
そこには人取橋付近の崖から2人が落ちて以来、見る事が出来なかった小十郎の姿があった。
政宗と共に崖から落ちたのを見た時は絶望し、それからの2人の安否を心配していただけに抱き付かずにはいられなかった。
幽霊などではない、自分の目の前に彼は立っている。
「こじゅさーん!」
「殿!お怪我はございませんか?」
「うん、大丈夫!」
会いたかったと言わんばかりに抱きついてきたを小十郎は優しく受け止めた。
見たところ松永には何もされていないようで、目立った外傷も見受けられない、至って元気なようだ。
小十郎もホッとしたようで、いつになく優しい表情を浮かべる。
「御無事で何よりです」
余程安心したのか、小十郎は無意識に抱きついてくるを受け止めるだけでなく、その大きな逞しい腕で抱きしめる。
傍から見れば何年も会っていない恋人が逢瀬を果たし、愛を確かめ合うかのようにも見える。
成実が、その様子をニヨニヨしながら面白げに眺めていたらしく、その視線に気づいた小十郎が慌ててを引き離した。
「おいおい小十郎、俺達の心配はなしか〜?」
「あっ、いや…そのような事はない、お前達も無事で良かった」
「何その取ってつけたようなセリフ!なるみちゃんショック〜!」
両手で顔を隠しワッと泣いた振りをしていたが、やがて自分と小十郎にしか聞こえないような小声でこう呟いた。
「梵天にチクってやる…ちゃんと小十郎が抱き合ってたって…」
「…!!待て!これは再会の喜びというものを分かちあってだな…!」
「冗談だよ、本気にすんなって。昔からジョークってもんが通じねえんだからな〜小十郎様は。まぁそこが面白いんだけどさ」
「そういうお前も人をからかう所は全く変わってないな…」
と呆れながら言いつつも、成実の冗談には内心冷や汗が止まらなかった。
こんな事が政宗の耳に入った日には、竜の右目と言われた小十郎でも最期を迎えるしかないだろう。
それはもう血に飢えた明智の如く、「Kill you!」なんて狂乱しながら彼は六爪流を振り回して自分を襲ってくるに違いない。
普段からを溺愛する政宗を誰よりも近くで見ていた分、容易に想像出来てしまった。
眉間に皺を寄せる小十郎をよそには先を急ごうと促す。
「闇殺」使いの忍者達がいつまた自分達を襲ってくるか分からない。
「よーし!こじゅさんとも再会出来た事だし、このまま長谷堂抜けちゃおう!
霧がマシになった今が好機!忍者頭もいないしね!」
「それはそうと今の忍達は…もしやあれが風魔の?」
「何だよ、知ってたのか小十郎?」
「ここに来る途中、放っていた黒脛巾から得た情報だ。どうやら松永が伝説の忍を雇ったと聞いたが…」
小十郎の言葉にの嫌な予感が見事に的中した。
彼の外伝ストーリー「長谷堂風雲戦」と同じ事になっている。
こうなった以上、あの伝説の忍・風魔小太郎との戦いは、まず避けられないだろう。
「トホホ…」と心の中で涙を流しつつ、とりあえず皆の足手まといにならないように頑張ろうと奮起する。
そして達一行は弐の門に向かう為、再び歩を進めるのだった…。
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53話、完成です。
斥候って強いイメージがあるらしいのですが、
この夢小説で出てくる斥候はアニメの伊達軍兵士3人組をイメージしているので
かなりヘタレです(笑)
成実殿は愉快犯だといい、綱元とタッグ組めばある意味最強かと(待て)
伊達殿との戦いを終わらせ、やっと小十郎がヒロイン達と合流。
小太郎戦まで一気に行こうかと思いましたが
何だか長くなりそうな予感がしたので2話に分ける事にしました。
それにしても、長谷堂に現れる忍の数には「ちょっ待って下さい!」と叫びましたよ;
全部倒す頃には小十郎に持たせたネギもへし折れてました(笑)
ブラウザでお戻り下さい。