『桜が咲く頃には』



半年前、元就は正室を迎えた。
その正室は毛利家に代々仕えた家の姫・
は知識も豊富だったが武の才も優れており、
元就が戦で不在の時は代わりに女城主として務める程だった。
当時、元就は毛利家が繁栄するのであれば、正室は誰でも良いと思っていた。
結納が終わった数日後、その話を聞きつけた乙女元親が
(それはもう嬉しそうにというか、からかいに来たと言った感じで)
フラッと城に遊びに来た際、元就はこの事を話した。
当然、姫若子思考の抜け切れない海賊大名は激怒。

「結婚するって聞いて、元就にもとうとう春が来たかーって飛んで来たのによ!
 俺はてっきり好きな女を正室に迎えたのかとばっか思ってた!」

薄暗く古文書や本が大量に積まれてある部屋でそう叫ぶ。
しかしそう言われても自分は女に興味がなければ、想い人すらいなかった。
自分の好みですらイマイチ分からない。
に初めて会った時も何も思わなかったし感じなかった。
元親の言う「トキメキ」やら「やたら心臓が高鳴る」といった現象は起きなかったし、
心はいつもの通り氷のように冷えたまま。
春が来るどころか年中真冬状態だ。
大体、元親曰く「結婚は好きな女と」なんて言っているが、全部が全部そうとは限らない。
この御時世、政略結婚でやむなく好きでもない相手と結婚させられる事もそう珍しくないのだ。
浅井夫婦は稀なケースと言っていい。
以前まではそんな考えでいた。
しかしここ最近、の事が気になって気になってしょうがない。
一緒に暮らし始め、お互いの事をよく知るようになってからこうなりだした。
の事をもっとよく知りたい、自分の事を本当はどう思っているのか気になる。
正直、元就は己の気持ちの変化に戸惑っていた。
今まで使えない者は容赦なく切り捨てていた自分が、こうも他人に執着する事になろうとは。
しかし、素直になれない性格故にと話をする時、口から出てくるのは酷い言葉ばかり。
もっと話をしたいのに。
目すら合わさない、否、合わせられないのだ。
そんな元就をは決して嫌がらない。
何故なら、はもう元就の気持ちに気付いているから。
元就が「お前の事は嫌いだ」と言っても、「私は大好きです」と微笑み返してくる。
どんなに罵倒しても、妻の口から返ってくるのは優しい言葉だった。
元就は、人からこのような言葉を言われる事に慣れていない。
どうしていいか分からなくなり、無言になってしまう事が多々あった。




そんなある日、が執務中の元就に突然こう言った。

「元就様なんか嫌いです」と。

そう言われた時、串刺しにされた気分に陥った。
自分は何度もに言ってるくせに、人から言われると胸が苦しくなった。
柄にもなく動揺してしまい、表情に出てしまったのかもしれない。
は暫く元就の様子をじっと伺った後、こう言った。

「なんて言ったらどうします?」
「!?」
「冗談ですよ。いつも嫌い嫌いと連呼されてるので少々意地悪してみただけです。
あの…もしかして動揺してらっしゃいます?」
「煩い!我は決して驚いてはおらぬ!

どうやら試されたらしい。
自分がの事をどう思ってるのか、知りたいといった気持ちも含まれているように聞こえた。
でも、冗談で良かったと内心安堵する。
は、元就の言動を見て始終嬉しそうだったとか。



桜の木に新芽が出来た頃、元親が又城に訪れた。
結構頻繁に遊びに来るので、仕事はちゃんとやっているのかと毎度思う。
部屋に入ってくるなり、「あれからうまくいってるか?」と執拗に聞かれて、
今まであった出来事をそのまま話した。
すると元親は少し考え、こう返答する。

「就ちゃん…本当は好きなんじゃねえの?」

そんなまさか…思わず筆を止めた。
信じられなくて、でも心の何処かで認めてる自分もいて葛藤するあまり、
元親に輪刀で当たってしまったのは又、別のお話。
春がゆっくりと近づいてくる。
元就が恋だと認める頃には、桜はきっと満開になっているはず。

FIN
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電車の中でふと思いついたネタ。
寝そうになった時に突然バキューンと来たからビックリした…。
いやもう本当電車が発車した瞬間、バキューンって…。
今回は短めに仕上げてみましたが本当自分は何が書きたいのか…(謎)
これのタイトル考えるのが一番困った…;;
元就は奥さん大事にするタイプだと思うに1票(なのに冒頭部分が酷過ぎる
結婚はやっぱり好きな人とが良いよね!!(力説)
元就夢を書くとヒロインが2タイプ(ドジだけど一生懸命の側近タイプ・
おしとやかで文武両道な姫タイプ)に分かれるのでいつもどっちにしようか迷います(笑)
大抵前者を取る事が多いのですが今回は後者で。
元親はやはりと言うか何と言うか乙女のままです。
ちなみにこの短編夢では元親と元就は友達みたいな関係です。
もう真面目なのかギャグなのか分からない文章ですみません;;
ブラウザでお戻り下さい。


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